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都会という灰色の街から逃げてきた。
手荷物など一切持たず、小さな命だけを持って。小さな命と言っても私の子供じゃない。契約している悪魔だ。
猫のような見た目をしているので、いつでも一緒。だれも悪魔だと気付かない。
そいつは真っ黒な毛並みを風になびかせ、ビルの屋上から双眼鏡でターゲットを見つめていた。
『開かれた黄泉への国へ誘われし咎人よ。汝は生と死の狭間にて─』
私は魔法陣の中央に立たせた呪殺用の人体模型にアーミーナイフを向け、黙々と呪文を唱える。
人体模型がパリパリと雷光を放ち、激しく揺れはじめたのを感覚で捕らえ、ナイフを投げ突き立てた。
『─霊柩に眠れ、咎人よ!! 我が名は奈津!! 冥界の扉を開く者也!!』
魔法陣から天へ突き抜ける激しい光を見送り、呪殺の成功を感じる。
【にゃははっ!! 即効にゃ。あのホテル…もうメシどころじゃにゃいにゃね】
「ほら、死ぬ瞬間なんて見てないで早く魔法陣片付けちゃってよ。帰るよ?」
【うにゃ。日霊保の道なんて考えずに、奈津はずっと殺してればイイにゃ。才能あるにゃ】
「大きなお世話よ」
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