-1-

6/17
前へ
/40ページ
次へ
「萌はネコ耳で 客引き決定!!」 涙目になっている わたしには気付かず、 彩加は親指を突き出し、 ニッと笑った。 そしてその視線が、 わたしの後ろ側に逸れる。 「あっ、お兄ちゃん!!」 振り返ると、校門から 奈良崎由紀也先輩が 入って来るところだった。 「早かったね、 午後からかと思ってた」 彩加が嬉しそうに駆け寄る。 「結局、大学サボったんだ。 片桐と放送部室で待ち合わせ することになってさあ」 そう言いながらこちらに 歩いて来た先輩が、 わたしに目を止め、 立ち止まった。 「お久しぶりです、奈良崎部長」 ぺこり、と頭を下げると、 なぜか先輩は顔を赤くした。 さっきの彩加と全く同じように、 目をウルウルさせている。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

390人が本棚に入れています
本棚に追加