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テーブルに一歩近づくと、 お客さんが、お、という顔をする。 「あ、あんたたちにばっかり かまっていられないんだから、 さっさと飲んで、 帰ってよねっ」 そう言って、思い切って メニューを放り投げる。 「…早く、決め…っ」 「じゃ、コーヒーふたつ」 「……」 あっけなく即決されてしまい、 わたしは「はい」と返事をして 自分で投げたメニューを 引き上げ、すごすごと 暗幕の裏に戻った。 オーダー表に、コーヒー2、と 記入していると、暗がりから、 押し殺したような笑い声が 聞こえて来た。 驚いて顔を向けると、 …待機所の暗幕の奥で、 春山先生が顔を伏せ、 笑っていた。 「……」 ――見られた……。
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