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「あ、奈良崎。
お客さん、呼んでるよ、ほら」
先生はそう言って、たった今
入って来たばかりの
新規の客の方を指差した。
「ツンのほうを多目でね」
「ああ、分かったさ!
わかってますよっ。
わたしの仕事っぷり、
しっかりと目に焼き付けて
おいてくださいねっ、センセ!」
彩加がキーーーッ、という顔をして
オーダー用紙をがしっと掴み、
お客さんの方に向かって
大股で歩いて行った。
……田辺くんしか
知らない彩加の顔って、
どんななんだろう……。
想像してドキドキしながら、
呑気に彩加の背中を
見送っていると…。
突然、腕を掴まれ、
くいっと引っ張られた。
ぱさ、と暗幕が視界を覆い、
目の前が真っ暗になる。
…えっ…。
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