第一話.『バケルライフ』

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 そもそも、伊弉諾悠は平凡人だ。いや、どちらかと言えば、並以下と言っても良い、唯一の友人、宮崎に「お前から普通を取ったら、ツッコミとヘタレ以外何も残らない」と、元々持っている物がクソな上、結構残っているじゃねぇかとまで思わせた男である。彼を並以下と称したのにも理由がある。ノーマルステータスから、マイナスされる要素の方が多いのだ。  先ず、成績は普通である。細かく言うなら中の下。ちょっとよろしくない。次、顔も普通である。細かく言うなら中の上。良かったね。三、運動神経も普通である。強いて言うなら中の下。救えない。四、その他諸々、人として個性を飾り付けるための趣味を持たない。なんか持てよ。部活もやらない。何もやらない。それでいて、平凡。そんな彼を、どう評価すれば良いのだろうか。これが面接なら「え?」と言われる事間違いなしだ。  そして極めつけは、友達の無さ。  無さと言うか、いる。一人だけだが。  中学の頃からの旧友、もとい貴重な友人である宮崎礼。中二から始まり、高校一年五月に至る約二年間を共にした、貴重な友達である。本人も、宮崎自体を貴重に思っている。丁寧にも扱っている。自分の限りない数少ない、たった一人な友人と言うのは、重々承知していた。そう、たった今、現在進行形、時間にして十二時十二分。まさにお昼休みなこの時。宮崎礼が、伊弉諾悠の前に立つこの時。宮崎が、ジェイソンマスクを装備しているまでは、少なくともそう思っていた。  「十三日の金よう……」  「今日は月曜日だよ!」  そんな風にツッコミながら宮崎の装備している面を思いっきり剥がしてやった。やや強引に。強引に剥がした性で、やや痛そうに、もだえ苦しんでいた。
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