第二話.『バケルガール』

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 花火事件から一週間経ったある日の事である。花火よりも、ゴリラ出没の方が、学校としてはインパクトあったのか、謹慎なしで済んだ奇跡的な男、宮崎礼の事はさておいてだ。肝心なのは、伊弉諾である。なんだか魂が抜けきった様な顔をしている。そんな白い存在へとなりつつある男と宮崎は肩を並べて登校していた。二人とも学ランを身にまとい、学校へと繋がる一直線の道路をねりねりと歩いていく。伊弉諾は、自転車登校であるが、モチのロンで、自転車から降りて一緒に歩いていた。引き攣れていく自転車のカゴには二つの学生鞄が放り投げられている。  「いっやー! しかしアレだな。お前のそのバケッチすげーよな。それがあれば面白い事考え放題やりたい放題じゃん」  宮崎の言うバケッチとは、バケルウォッチの略称である。宮崎が、長い、との事で提案された、バケルウォッチの呼び名だ。適当に名付けた名前だが、存外二人とも気にいっている。伊弉諾は、つけられたその右腕手首を宮崎に見せつける。  「でも、コレやっぱり限度があるみたいだ。欠点って言うのかな、ちゃんとあったよ」  「へぇ、例えば何じゃらほい?」  「先ず自分より大き過ぎる物にはなれないって処かな。だからティラノザウルスとかの恐竜系は駄目だったね。大き過ぎるサイズ変化じゃないなら大丈夫みたいだけど」  「なるほどん。ウルトラセブンにはなれないって事か」  「なんでセブン限定なんだよ! セブン限らずウルトラマンにはなれないよ!」  「なれないのかよ!」  「そんな意外そうな顔されても!」 
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