「なんでですか?」

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―――ざり、 と筆とカンヴァスが擦れる音が響く。 「―――せん、ぱい」 「動かないで」 「動いていないです」 む、とちぃさく唇を尖らせた。同じ格好でいるのは、キツいのに。少しだけでいいから、気を紛らわせたい。 「―――賀山先輩。無理です」 宣言して、関節から力を抜く。あぁ疲れた。 「あ、なに勝手にやめてるんだよ」 「だって。無理なんです」 そう言いながらブレザーを着込む。この真冬にブラウス一枚で床に座り込ませた挙げ句に同じ格好をずっとさせるとか。鬼畜と読んでもいいと思うのは、私だけなのかな? 「賀山先輩は椅子に座ってるからまだマシでしょ?寒いし、身体かちこちになっちゃうんですよ?」
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