「もう嫌だー……」

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ちょっと動いただけで顔と顔が触れそうだし、肩を掴まれたら動けないし。どのみちスカートに足を落とされてるから動きようがないんだけど。 「……っ、ぅ……あの、えっと……」 「うん、なに」 口調は静かで穏やかなのに肩を掴む手の力を強くするのはなんでですか?あぁでも痛くない程度に力加減されてる。こういうのが狡いの。 優しくしたり意地悪したり。 心臓が持たない、なんて言えない。 「……はーやーまー」 「……ぇ、えっと……」 ―――ピロリン 携帯の着信音だ。私のじゃない。 「ごめん僕の……佐藤か。……もしもし、どうした?」 携帯に話しながら離れて、手を引っ張る。路地裏から出る方向だったから、気付かれないように息を吐いて、賀山先輩の後について歩く。家の前で、鞄を渡される。 「んじゃ、ばい」 小さな声で言って、賀山先輩は帰っていった。
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