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部屋の暖房は暑くなりすぎないように控えてある。何度も細かく調整する必要のないように。
あたしの体はもう、それほど冷え切った状態ではない。むしろあたしは体の中が熱い。
「憎らしいほど晴れてたけどな」
加湿器をかけたいくらい乾燥していた。肌の乾燥には歳を思い知らされる。
煙草の煙では雲は現れない。朝露を乗せた葉のような瑞々しさはどこにあるだろう。
今は凍って、潤いを感じさせる姿ではないだけなのかもしれない。
あたしは白衣を脱いで振り返った。そして彼の、信也の背中に覆い被せてやった。
白衣ではなく、あたし自身を。
《了》
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