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「そっちがその気なら、
――あたしが先に、
倍にして返してあげる」
叩かれた頬をいきなり掴まれ、
力任せにつねり上げられる。
あまりの痛みに声も出せず、
月子ちゃんの手を押さえ、
じたばたと足を動かすと、
ぱっと頬が開放された。
顔の左側全体が
大きく膨らんだように、
ズキンズキンと鼓動が響き、
感覚がぼやける。
涙が自然と溢れ出て、
目の脇を通り、
こめかみに流れ込んだ。
「…やめて、月子ちゃん…」
頬を抑え、声を絞り出す。
「……先輩、
哲哉くんだけじゃなくて、
…私からミツルまで
奪おうっていうの?」
「……?」
ぐっと襟元を掴まれ、
引き上げられると、
目の前に燃えるような
月子ちゃんの目があった。
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