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ドアにもたれ、
座り込んだまま、
わたしはぼんやりと
宙を見つめていた。
扉を叩き続けた右手は
痺れて感覚を失い、
助けを呼び続けた
喉は枯れている。
手に持った携帯に目をやると、
圏外、という文字の横には、
PM7:35という現在の時刻が
表示されていた。
涙が乾いた頬も
ひりひりしていたけれど、
それがあまり気にならないほど、
打たれ、抓られた左頬の腫れと
痛みの方が酷かった。
時間が経つにつれ、
寒さがじわじわと
この部屋を浸食し始め、
わたしの身体を
冷たく冷やして行く。
わたしは、自分の身体を
守るように両手で膝を抱えた。
…板東先輩…。
助けを呼ぶのを諦め、
こうして座り込むわたしの
頭の中を占めているのは、
2年前の苦すぎる記憶だった。
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