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彩加なら、…もしかしたら、 わたしが会場に姿を現さない事を 心配してくれるかもしれない。 でも、…こんな場所に 閉じ込められているとは、 さすがの彩加でも…。 ゴトゴト。 わたしはビクリと身体を揺らした。 ゆっくりと天井を見上げる。 今度ははっきりと聞こえた。 ――誰か、この上にいる。 ミシ、ミシ、と軋むような足音。 きっと、大きな声で 助けを求めれば、 わたしの声は充分に 届く距離だ。 でも…。 叫んで、助けを 呼びたいはずなのに、 …わたしはじっと動きを止め、 様子を窺っていた。 頭のどこかで 警告音が鳴っている。 こんな場所で、こんな時間に、 この人は、何をしているんだろう。 屋根の焼け落ちた 体育館の中で、 …しかも、…この人物は、 明らかに足音を殺している。 わたしは、 透けて見えるはずのない 天井をじっと見つめていた。
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