321人が本棚に入れています
本棚に追加
数メートル進んだところで、
白井さんはわたしに
停止するよう手をかざした。
「こっち」
校舎の壁際にわたしを促し、
上を見上げながら
壁を擦るようにして進んで行く。
「映っちゃうから、
気をつけて。
出来るだけ壁際、歩いて」
しばらく歩いて行くと、
白井さんが足を止めた。
見ると、塀とフェンスの
繋ぎ目に、少し
隙間が出来ている。
「萌ちゃん、
ここから出られる?」
「…あ…はい…」
近づくと、突然脇に
手を入れられ、ふわりと
身体を持ち上げられる。
コンクリートの基礎の上に
すとん、と下ろされ、
わたしはフェンスとの
隙間をカニ歩きで進み、
塀の外側に出た。
振り返ると、白井さんが
驚くほど身軽に
塀に飛び乗った。
最初のコメントを投稿しよう!