第2章の続き

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 嬌声を上げる三輪から離れた坂井の口からは、咥えていた千円札が消えていた。  きっとおっぱいパブではあんなことをするに違いない。  呆気に取られていると、店長が手招きで私を呼んだ。  男はやはり母親に似るのだろうか。  少し潰れた鼻や、えらの張った輪郭が奥さんそっくりだ。  背は蓮よりも少し大きいのではないだろうか。  小柄な両親からでもこんなに大きな人間が生まれるのか。  大学を出たばかりにして、早くも中年の様に脂肪をまとった体は優に100キロを超えているだろう。  そして声は市井のそれと瓜二つだ。  顔を見ずに声だけを聞いていると、まるで市井がそこに居るかの様な錯覚に陥るほどだった。  気乗りはしないが店長の横に腰を下ろし、ガラスで出来たお猪口に冷酒をお酌した。
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