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「大変……まぁ、大変ですね。料理なんて特に。毎日考えるのが本当大変」
飲み物が並ぶコーナーに移動して、指で一つ一つ確認しながらレモンティーに辿り着く。その隣で航はコーヒーをおにぎりの上に重ねた。
「でも」
レジに向かう里紅の後を航は付いて歩く。
「管理人さん含め、マンションの人たちに良くしてもらってますから、苦労をしたという気はしてませんよ。こうして学校にもちゃんと通えてますし」
「そうですか……」
航も里紅の次にレジに買う物を置き、終わるのを里紅は待っていた。
ふと店内の時計を見ると、七時前になっている。
里紅はあまりゆっくりする時間も無いなと思うと同時に、もっと余裕の無さそうな人がいることに気付く。
お待たせしましたと袋を提げた航に尋ねる。
「時間、大丈夫ですか?」
学校の先生ならば、学生よりも早く学校に行かないといけない。たまに会議に遅れそうな先生を何度も見た里紅は時計を指差した。
里紅の指を辿って時計に行き着いた航の目が大きく見開かれる。
「もうこんな時間!? り、里紅さんごめんね、先に行きます!」
慌てて店を出る航の後ろ姿を小さく手を振りながら見送った。
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