1・学校の先生と隣人さん

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 里紅は普通科文系コースの二年三組に席を置いていた。 「おはようだね!」  机に鞄を置いた直後、目の前に現れたクラスメイトに里紅は「あぁ、うん」と軽く流した。 「ちょっと冷たくない? 連休明けだよ? お久し振りなんだよ?」 「若葉に会って「あー今日からまだ学校だな」って気分になったよ」 「本当?」 「ほんとほんと」  クラスメイトの早乙女若葉(サオトメ ワカバ)の上目遣いに里紅は目もくれない。  鞄の中から取り出した教科書とノートを机の中に入れて行く。  始業のチャイムが鳴る数分前だというのに里紅の席にはいつも一緒にいる面子が集まっていた。  いつも何かしらの冊子を持っている島原夏鈴(シマバラ カリン)。何事にも薄い反応しか返さない園部雪菜(ソノベ ユキナ)。唯一の男子である世良秋人(セラ アキト)。  若葉と里紅を含めたこの五人は自然と集まる程に仲が良かった。 「あ、と。世良くん、誕生日おめでと」  里紅は鞄の中から小さな紙袋を取り出して秋人に渡した。受け取ってすぐに中身を確認した秋人はチョコレート菓子の名称を呟いてから紙袋の中に戻した。 「プレゼント第一号、ありがとな」 「去年も思ったけどさ、春生まれなのに"秋人"って珍しいよね」 .
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