1・学校の先生と隣人さん

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 若葉がそう言うと秋人は困ったように笑う。 「良い名前だと思うし、いいんじゃない?」  抑揚のない雪菜の隣で夏鈴が激しくうなずいていた。  秋人に対して好意を持っているのではなく、夏鈴の好きなゲームの主人公の名前が"秋人"であるだけだ。 「そういやさ、牧田(マキタ)先生って今日来ないのかな?」  若葉が眉根を下げて誰とも決めずに尋ねた。 「若葉休んでたんだっけ? 連休前に牧田先生入院しちゃったんだよ」 「に、入院!?」  里紅の返答に驚いて声が大きくなった若葉は周囲から集中した視線にうつむく。  恥ずかしさで耳がうっすら赤く染まっていた。 「持病が悪化というか、四月の健康診断で引っかかってたのか、私もその辺は聞き流しちゃっててうろ覚えなんだけどね」 「牧田先生がいないんじゃ、ノート提出する意味ないよねぇ……。あー、成績落ちちゃうよ」 「それ以上落ちる成績なんてあるのかよ?」 「ねぇ、世良くんてりっちゃん以外には冷たいよね……」 「ってかさ、牧田先生の代わりの英語の先生が来るんじゃないの?」 「夏鈴ちゃんも無視しないでよ。淋しいよ」 .
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