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若葉の扱いは連休前と変わらない。というより、五人で一緒にいるようになってから何も変わっていなかった。
先生、と聞いて里紅は一人の男の姿が浮かんでいた。
マンションの隣人。
岩月航。
学校の先生だとは管理人の一人娘である仁科佳奈から聞いたが、まさか臨時の英語教師であると考えるには都合が良すぎるのではないだろうか。
単純に連休を機に引っ越しただけと考える方が現実的だ。
マンションの近くには小学校も中学校もある。
双葉学園よりは離れてしまうが高校や大学もある。その中でピンポイントに里紅のいる高校に来るのは漫画的すぎると言えた。
ホームルームが始まるチャイムが聞こえて、それぞれがそれぞれの席に戻る。
ホームルームが終わると、教室の中は一時限目の話でもりきりになった。
一時限目は英語。
担当が入院している今、教科の変更も無かったので自習になるか臨時の教師が来るのか。声を潜めているグループと大きな声を出しているグループ両方の声を聞きながら里紅は英語の教科書をパラパラとめくっていた。
「どんな人かなぁ?」
一番席の近い夏鈴が里紅の肩を小突いた。
「転校生じゃないんだから……。普通の先生でしょ」
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