プロローグ

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 四月二十九日の昭和の日から始まる黄金週間――ゴールデンウィークは、私こと新堂里紅にとって稼ぎ時である。が、自宅のあるマンションの一階にあるバイト先のコンビニ以外にも掛け持ちをしたくても政府が定めた祝日の量が旅行をするのに最適だと人員が足りなくなってしまったコンビニが、私に掛け持ち用の短期アルバイトを探す暇さえも与えなかった。  その代わり、ゴールデンウィーク中だけ時給を三十円も上げてもらったので、文句を言わずにシフト表に名前を書き込んだ。  自分の手帳にも予定を書き入れ、すっかり埋まってしまったなぁという感想を抱きながらパタンと閉じる。 「里紅ちゃん、里紅ちゃん」  コンビニの常連さんでマンションの管理人さん――増井さんがレジの裏で手帳を閉じていた私を手招きした。 「なんですか?」 「五月五日にね、里紅ちゃん家の隣に新しい人が入るから、よろしくね」  私の家の隣で空きと言うと、四〇六号室か角部屋の四〇四号室ということになるけれど、どちらにしても今までお隣さんがいなかったのでまさに朗報と言える。 「やっとなんですね。もうずっと空いてましたけど」 .
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