プロローグ

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 五月五日はゴールデンウィークの後半も後半の日。  里紅は朝からコンビニのバイトに向かうべく部屋を出た。表札の上に印字されている四〇五という部屋番号。今日は四〇四号室に新しい人が引っ越して来る。  四〇四号室は角部屋で里紅の住むマンションでは広い部屋であり、その分家賃も割高となっている。  せめてバイト前にどんな人が来るのか見ておきたいと、里紅は時間を確認しながら自分の部屋の前で待っていた。駐車場にはすでに引っ越し業者のトラックが停まっている。もう間もなく会えるはずだ。  階段を上る足音が聞こえた。  恐らくエレベーターが荷物で埋まってしまったので階段を使っているのだろう。 (だったら……)  里紅は階段へ向かった。そうすれば新しい入居者と必ず鉢合わせになる。  エレベーターに実は乗っていて、階段は業者が使っているだけという考えはまったく無かった。  角部屋の四〇四号室を過ぎ、四〇三、四〇二も通り過ぎて四〇二と四〇一の間にある階段には、上って来る複数の足音が聞こえる。 「この階の四号室に願いします」  業者とは別の声に里紅は足を止めた。 .
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