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「……えぇ」
幸い、この女性に赤らんだ顔を見られることない。彼女の頭部はリューティスの背中側で垂れ下がっているはずだ。
「……いいよな、気軽に付き合える人が相手のやつは」
女性の言葉に苦笑をもらす。──その言葉には共感する。
「……えぇ」
リューティスが思いを寄せる相手は貴族だ。それも有名な上流貴族。王族との血の繋がりも多少あると聞く。
「なんだ、お前もか」
あぁ、この女性もか、と苦笑を強めた。
「貴女もですか」
小さく呟くと、うん、という答えが返ってきた。
「相手が男爵家の長男でな。準男爵か騎士家か大商人の娘じゃなけりゃ話にならんて、そいつの親父にいわれた」
貴族の長男ならば、仕方がない話だろう。ただの村娘には手の届かない存在だ。
「──でもな」
そこで話が終わると思っていたのだが、まだ続いていた。
「もし、……もし、あいつの相手が見つかる前に、Sランクになるか騎士になるかしたら、考えてみてもいいっていわれたんだ。……わたしは諦めない」
その言葉ゆえの先程の無謀な挑戦か。
Sランクというのは、 本来関係のないはずの貴族にまで影響を及ぼす。それは、Sランク持ちともなれば民から信頼される存在であり、民に対して多大な影響力を持つからだ。
そのため民からの徴税で暮らす貴族は、民を安易にまとめあげることのできるSランク以上のランクの持ち主を、平民として扱うことに躊躇するのだ。
万が一怒らせて反乱でも起こされたらたまったものではない、ということだろう。
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