一章 黄熊と巨大蜘蛛

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   暑い太陽の光が、燦々と降り注ぐ。木々の下を歩いていても、暑いほどである。  つい数刻前、この暑さに負けを認めたリューティスは、暑さを緩和する魔法具──魔方陣が彫り込まれ、使用者の魔力、もしくは魔法具に取り付けられた魔石に込められた魔力を利用して、魔法を発動させる道具──を腕にはめて、暑さとは無縁の旅を進めていた。  昨日旅を始めたばかりのリューティスであるが、この旅が初めてではない。  旅にはそれなりに慣れてはいるが、久々の旅。先を急ぐものでもない。ゆっくりと歩くリューティスは、時折道端に生えた薬草を採取したり、食べるために魔物を狩ったりしていた。  ──前方に小さな村が見えてきた。  森に囲まれたその村は、美味な蜂蜜の産地として有名な村である。  タルトにパイにクッキー。蜂蜜を使って美味しく仕上げる料理はたくさんある。ただパンにたっぷり塗ったり、ヨーグルトに混ぜたりするだけでも美味しい琥珀色の魅惑。  料理を作るのが趣味であるリューティスであるが、食べるのも好きだ。「お前が摂取した糖分は何に使われているんだ……?」と紅い髪の親友に問われたことがあるが、おそらくは戦闘とその訓練と、それから頭を働かせるのに主に使っているのだと思われると答えたところ、溜め息を吐き出されてしまった。  未だにあの溜め息の理由は不明である。 .
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