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「……魔法、お教えしましょうか?」
気がつけば、そんな言葉を発していた。
「おまえになんか誰が教わるか」
きつい言葉を返されて苦笑を漏らす。リューティスに教わるということが、この女性のプライドがゆるさないのだろう。
「……では今からいうことは独り言ということで」
これならば彼女も変に意地をはることなく、耳を傾けることくらいできるだろう。
無言になった彼女に密やかに笑いながら、口を開く。
「貴女の魔力は治癒魔法向きです。治癒魔法を訓練して、どこかのパーティに混ぜてもらえば、すぐにAランクまでのぼりつめることができるでしょう。あとは努力次第です」
「────っ……」
聞き返したいことは、山ほどあるに違いない。なぜ魔力だけでどんな魔法に向いているか判断できたのか、どうしてAランクまですぐに上がれると思ったのか。しかし、それを問うことは彼女のプライドがゆるさない。
彼女の葛藤がなんとなく感じ取れて、リューティスは笑いをこらえた。
──人には向き不向きがある。魔法の向き不向きは、その者が持つ魔力の性質のようなもので、決まるものだ。
彼女の魔力が治癒魔法に向いているように、リューティスの魔力も向いているものがある。
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