二章 自称村一番の美女

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  「秋祭りではないのですね」 「あぁそれはね、水神様への感謝の祭りだからだ」  ──水神。水を司る神が祀られた祠がこの近くにあるというのは、耳にしたことがある。 「この辺りは昔、夏になると雨が全く降らなかった時期があるらしい。そのころの雨乞いの儀式の名残でもあるんだ」  百年ほど前にあった干魃期のことだろうか。十年ほど続いたといわれているそれは、数えきれないほどの死者を出した。  村の大半は壊滅し、森は枯れて、農作は不可能。水属性持ちの者たちが、どうにか生み出したわずかな水を、分けあって飲んで生き延びたと伝えられている。 「ちなみに祭りはいつあるのかお聞きしても?」 「明後日さ。にもかかわらず良い肉が手に入らなくてどうしようかと話し合っていたところに君が来た」  明後日ならば、その祭りとやらを見学していく余裕がある。これが一週間後であったならば、諦めていたが。 「部外者でも参加できますか?」 「ん? あー、どうだろ? 君が参加するぶんには何も問題ないと思うけどな」  それはサンダーベアを仕留めたから、であろうか。 「村長さんに伺ってみます」 「うん、それが一番だな」  村長が頷けば大丈夫であろう。もし否といわれても、少しばかり残念に思うだけのこと。 .
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