二章 自称村一番の美女

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   たどり着いた村長宅の扉を、ケインが叩く。すぐにこちらへ向かってくる一つの魔力。流石に一度あっただけの人物の魔力は覚えておらず、誰のものなのかは不明である。  扉を開けてひょいと顔を覗かせたのは、シーナであった。 「あれまぁ、終わったのかい?」  リューティスを見るや否や、扉を開け放った彼女の問いに首肯した。 「はい。村長さんに報告に参ったのですが、今ご在宅でしょうか?」 「いるわぁ。あんたが来たら入れるように言われてるからね、入りな」  ケインに礼を告げてから、お邪魔しますと呟いて、シーナのあとに続いて村長の家の中に入る。昼間と比べればだいぶ暗いが、それでも魔道具に照らされた廊下は明るかった。  突き当たりの昼間に来たときにも通された部屋で、村長は待ち受けていた。 「あぁ、終わったんだ」  ソファーから立ち上がった村長は、ほっとしたように表情を緩める。リューティスのランクがAであると伝えていたが、それでも自分は心配されていたようだ。 「えぇ、終わりました」  “ボックス”から依頼書を取り出して彼に見せる。依頼書は特殊な魔方陣が描かれており、依頼を達成すると達成したことを示す文字が現れるのである。 「お疲れ様。……ありがとう、助かったよ。あの黄色い熊のせいで、北側の森に近づけなくてね。南側の方はあまりいい獲物がいないから、祭──あ、そういえば言ってなかったね、祭のこと」 「いえ、ケインさんからお聞きしました」  リューティスが首を横に振って否定すると、村長は僅かに驚いた様子を見せた。 .
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