二章 自称村一番の美女

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   村長に連れられて、村長宅から出てすっかり暗くなった村を歩いていると、あることを思い出した。 「村長さん」 「ん? 何かあった?」  こちらをちらりと振り返った彼に、訊ねる。 「祭の見学をさせていただいてもよろしいでしょうか」 「祭?」  僅かに驚いた気配が、背中を向けた村長からなんとなく伝わってきた。 「勿論いいよ。こんな寂れた村の祭でよければ、いくらでも見学していって」 「寂れてなどいませんよ。……では見学させていただきますね」  昼間の村は、それなりに活気があった。今は夕飯時だからか、明かりをともしたあちらこちらの家々から、楽しそうに会話をする声が聞こえてくる。 「首都と比べたら、随分と寂れていると思うけど」 「確かに僕は首都から来ましたが、生まれは小さな村ですから」  その言葉に興味を引かれたのか、村長は再びちらりと振り返ってリューティスを見た。 「綺麗な敬語で話していたら、お貴族様のご子息かと思ってひやひやしていたけど、違ったんだ」  村長はよかったと小さく呟いた。貴族が怖いのだろう。すべてがすべてではないが、貴族という立場に、何を勘違いしてか、ふんぞり返り民を見下す者もいる。 .
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