二章 自称村一番の美女

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   気に食わぬことがあればわめきちらし、民から搾り取った税金で派手で無駄の多い暮らしをする。  国王陛下も手を焼いているようで、脱税や民に対する脅迫等の証拠を見つけては、勘違い貴族を切り捨てている。 「貴族ではありませんよ。一介のギルド所属者と農民の子供です」 「ギルド所属者の子、ね。……あぁ、ここだよ」  立ち止まった村長。その前に立つ建物は、村長の家よりも丈夫そうな木造の建物である。  真鍮製の鍵をポケットから取り出した村長は、それを鍵穴に突っ込み、回した。かちりと小さな音がする。鍵があいた音であろう。  村長が食料庫の扉を開け放つ。無論中は真っ暗である。光属性魔法を使いたいところであるが、今は使えないことになっているため使わない。 「今は刈り入れ前だから随分空いているように見えると思うけど、冬前には毎年いっぱいになるんだ」  だいぶ暗闇になれてきた目で、食料庫の中を見回すと、なるほど確かに量が少ない。  根菜類や麦から干し肉や薫製肉らしきものまで、様々なものが並べられていた。  湿気や虫を避けるための魔方陣が床に描かれており、これで食料を守っているのだろう。  魔力の接近を感知して振り返ると、村長の家の方からシーナが駆けてくるのが見えた。 「──村長、持ってきました」  シーナは村長に駆け寄ると、手にしていた小さな革製の袋を手渡す。 .
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