二章 自称村一番の美女

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  「ご苦労様」  村長は手渡しされたそれの口を緩め、中から銀板貨二枚を取り出す。 「これでいいかい?」 「毛皮と牙が不要でしたら、銀板貨一枚と銀貨六枚でいいですよ」  村長は思案顔になった。暫し考え込んだあと、銀板貨一枚を袋の中にもどし、代わりに銀貨六枚を数える。 「ならこれで。毛皮と牙はいらないよ」 「わかりました」  リューティスは七枚の貨幣を受けとると、“ボックス”の中の革袋に入れて、代わりにサンダーベアの肉の入った麻布の袋を取り出す。無論、一袋では入りきらないために、袋の数は多い。 「確認をお願いします」 「わかった。……シーナ、二人連れてきて」  村長に指示されて、シーナが食料庫から出ていく。 「肉は凍らせてあります。骨は除去ずみです。必要ならばそちらはお譲りしますが」 「骨はいいよ。肉の大半は香草焼きにするからね」  サンダーベアの骨はなかなか良い出汁が出るのだが、香草焼きならば関係ない。  村長に言われた場所に肉の入った袋を下ろしていく。その数、十。 「腕の肉は多分これです」 「ああ、ありがとう」  ついでにと伝えると、村長は頷いて礼を口にした。  肉をすべて出し終えると、若者が二人、食料庫の中へ入ってきた。村長に暇を告げて、食料庫の外へ出る。  ぽつりぽつりと家の明かりが消え始めた村を見て、気がついた。 (……宿をとり忘れていました)  久々の旅に、少々浮かれていたのかもしれない。  溜め息を吐き出したリューティスは、一人森の入り口へと足を向けた。 .
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