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「ご苦労様」
村長は手渡しされたそれの口を緩め、中から銀板貨二枚を取り出す。
「これでいいかい?」
「毛皮と牙が不要でしたら、銀板貨一枚と銀貨六枚でいいですよ」
村長は思案顔になった。暫し考え込んだあと、銀板貨一枚を袋の中にもどし、代わりに銀貨六枚を数える。
「ならこれで。毛皮と牙はいらないよ」
「わかりました」
リューティスは七枚の貨幣を受けとると、“ボックス”の中の革袋に入れて、代わりにサンダーベアの肉の入った麻布の袋を取り出す。無論、一袋では入りきらないために、袋の数は多い。
「確認をお願いします」
「わかった。……シーナ、二人連れてきて」
村長に指示されて、シーナが食料庫から出ていく。
「肉は凍らせてあります。骨は除去ずみです。必要ならばそちらはお譲りしますが」
「骨はいいよ。肉の大半は香草焼きにするからね」
サンダーベアの骨はなかなか良い出汁が出るのだが、香草焼きならば関係ない。
村長に言われた場所に肉の入った袋を下ろしていく。その数、十。
「腕の肉は多分これです」
「ああ、ありがとう」
ついでにと伝えると、村長は頷いて礼を口にした。
肉をすべて出し終えると、若者が二人、食料庫の中へ入ってきた。村長に暇を告げて、食料庫の外へ出る。
ぽつりぽつりと家の明かりが消え始めた村を見て、気がついた。
(……宿をとり忘れていました)
久々の旅に、少々浮かれていたのかもしれない。
溜め息を吐き出したリューティスは、一人森の入り口へと足を向けた。
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