閑話 その手紙が

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   男は小瓶の蓋を開けると、臭いを嗅いだり光に透かして色を確認したりしてから一気に飲み干した。 「……相変わらずの味だ」  不味くはないが美味くもないそれに、男が苦笑する。返された小瓶を清めの魔法で綺麗にしながら、リューティスも苦笑した。 「ではこれで」  一礼をして、リューティスは男の前から去った。向かう先はフィーとヤエのもとである。  それぞれ違う依頼を受けたリューティスたちであるが、向かう場所は同じ街の北の森だ。  リューティスを待って立ち話をしていた二人に近寄ると、こちらに気がついた二人が訊ねてきた。 「何かあったのか?」 「それ何?」  ヤエとフィーの疑問に、リューティスは包みを開けて差出人を確認しながら答えた。 「手紙だよ。デッディーで友人に出した手紙の返事が届いたんだ」  包みの口を大きく開けることはしない。王族やら五大貴族やらの印璽が押された封蝋を見せびらかしたくなどない。  ──ルシファ・レイトナール  ──アーク・レオン  この二通は特に問題ない。デッディーからと聞いて、前者の手紙をギルドに託したのは一体誰なのか気になるが。 .
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