閑話 その手紙が

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   ──南の国王家第一王子 ガイア・レントリア・ゼノス  ──中央の国公爵アクスレイド家一の姫 ユリアス・アクスレイド  ──中央の国公爵ヴィルソン家次期当主 アンドリュー・ヴィルソン  ──東の国皇族皇太子 皇 冬也  問題はこの四通である。包みにくるまれていたことに安堵を覚える。封蝋が剥き出しになっていたら、どれほど混乱が起きていただろうか。  だが、封蝋が見えずとも、依頼を受けたあの冒険者は、依頼人が誰であるか知っていたはずだ。使用人が自らの名前で依頼をしたとは考えづらい。依頼人が大物であればあるほど、この類いの届け物は丁重に扱われる傾向にある。自分が使える主に頼まれたものを、主の名を使わずに依頼するとは思えない。  差出人を確認しおえると、リューティスは“ボックス”に包みをしまった。読むのは夜だ。  早く読みたいと思う気持ちがないわけではない。特にあのエメラルドグリーンの少女からの手紙は、読みたいと思う気持ちが強い。  しかしながら、彼らを待たせたくはないのだ。 「読まなくていいのか?」 「一通二通じゃないからね、依頼を終わらせてから読むよ」  不思議そうに首を捻るフィーに答えて、リューティスはギルドの外へと足を向けた。 .
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