閑話 その手紙が

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   依頼の内容はさほど難しいものではない。夕方ごろまでかかると思っていたが、日が暮れ始める前に依頼を達成し、帰路についた。  門を潜り時計を確認すると、時刻は三時過ぎである。昼飯を抜いていたために、空腹である。  昼過ぎにも関わらず、露店からは良い匂いが漂ってきて、空きっ腹が刺激された。 「……飯」  腹を押さえてぽつりと呟いたフィーに、苦笑する。鳥型の魔物の肉を焼いていた露店で、串焼きを幾つか購入し、腸詰め肉とたっぷりの野菜を挟んだライ麦パンを売っている露店で一人二つずつ購入して、宿へ戻った。  早速串焼きにかぶりついたフィーを横目に、リューティスは“ボックス”から人数分の木製のコップと葡萄酒の入った小樽を取り出し、コップに注いで二人に手渡した。 「くれんのか?」 「うん。なかなか美味しい葡萄酒だよ」  貴族が買うような、高級酒である。その中でも高価で人気のあるもので、コップ一杯金貨一枚などという馬鹿げた値で取引されていることは、口が裂けても言わないが。  一口飲んだヤエが、硬直した。舌が肥えているのだろう、良い酒だとすぐに気がついたに違いない。  おそるおそるといった面持ちでこちらを見た彼に、ふわりと笑みを返す。その隣にいるフィーは、そんな彼のようすには気がつかず、単純に美味いと言葉を発していた。 .
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