閑話 その手紙が

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   まだ温かい肉とパンを食べ終えて、リューティスは“ボックス”から手紙の包みを取り出した。  包みから取り出さねば、封を切ることはできない。しかし、封蝋を二人に見られると、面倒である。  一人になれる場所で読むのが一番であるが、夜か早朝にでも森の中にいかない限りは一人きりにはなれない。  リューティスは諦めて包みから手紙を全て取り出した。  上から順に読もうと、手に取ったのは九尾の狐を型どった印璽が押された蝋の封を開けようとすると、正面から視線を感じて目をあげる。  瞬きも忘れて硬直しているヤエが目に入って、その視線をたどった。視線の先にあるのは、送り主の名──すなわち、『東の国皇族皇太子 皇 冬也』の文字。  ジパング語で書かれているが、彼が貴族ならば理解できてもおかしくはない。貴族の中には、いずれ必要になるかもしれないという理由から、中央の国や南の国や西の国で使われているオルス語以外の、北の国で使われている言葉と東の国で使われている言葉の二つの言語を学ぶ子弟もさほど珍しくはないのだ。  とはいえ、話せない者の方が圧倒的に多い。特に東の国の言語──ジパング語は難しく、文字も多いことから、話せても読み書きができない者も多い。 .
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