閑話 その手紙が

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   そんな中、差出人の名を見て驚愕しているヤエは、頭脳の優秀な部類に入るだろう。 「気になる?」  面白半分にジパング語で問いかけてみると、素早く視線をこちらに移したヤエが、顔をこわばらせたまま、ジパング語で問うてきた。 「皇太子殿下と知り合いなのか?」 「親友、だね」  それ以上のことを答えるつもりはない。  目を丸くしてリューティスとヤエを見比べているフィーに微笑みかけると、彼は目を輝かせて口を開いた。 「ヤエも東の国の言葉、わかるのかっ!?」 「あ、あぁ……」  その勢いに気圧されたらしいヤエに、リューティスは小さく笑うと、手紙を封筒から抜き出して、和紙を二つ折りにしたそれを開いた。  流麗な文字が並ぶ手紙。相変わらず元気そうで何よりだ。  『こちらに来たら城に寄れ』という一言には、思わず苦笑してしまったが。  手紙を封筒に仕舞い、包みの一番下に仕舞う。次の手紙を取り出すと、これまた問題のある手紙であった。  金の獅子の紋章が描かれた封筒。その封蝋も無論獅子。  ──『中央の国公爵ヴィルソン家時期当主 アンドリュー・ヴィルソン』。  中央の国で有名な紋章の一つであるそれに、流石のフィーも気がついたようで口をあんぐりと開け、その視線をたどると、差出人の隣に描かれたそれを凝視していた。  再び硬直したヤエと呆然とするフィーに苦笑しながら、 手紙の封を切った。  その後、似たようなやり取りが、何度か繰り返されたのだった。 .
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