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連れていかれた先は、周りの家より二回りほど大きな木造家屋。男が真鍮のノッカーで三度扉を叩けば、暫くしてひとつの魔力と気配がこちらへ向かってきて、扉を開けた。現れたのは初老の女性である。
「あらぁ、ケインじゃないか。どうかしたのかい?」
「依頼の受注者が来た」
穏やかな口調で言葉を紡ぐ初老の女性は、男──ケインの言葉でこちらに気がついたのか、榛色の瞳をリューティスに向けて、まぁ、と呟いた。
「これはまた、別嬪さんだねぇ」
──リューティスは溜め息を呑み込んだ。性別を間違えられるのは、本日二回目である。
「ちょ、ちょっとシーナおばさん! 彼は男だよっ!」
慌てたようにケインが彼女の服の袖を引いて告げるが、シーナはゆっくりと首を傾げた。
「何いってるんだい? こんな綺麗なお嬢さんに失礼だよっ」
「本当だって……」
ケインに教えられようと誤認は解けない。リューティスが“ボックス”からギルドカードを取り出して提示すれば、シーナは硬直した。
「え、本当に男……?」
顔を凝視されて、リューティスは溜め息を吐き出した。なぜこうも女性に間違えられるのだろうか。
「僕、そんなに女顔ですか……?」
「え、あぁ、うーん……、顔は中性的だよ。多分女に見えるのは、雰囲気が落ち着いてて、……あとは仕草が滑らかなせいかね?」
中性的、のところで胸を撫で下ろした。完全な女顔ではないようだ。雰囲気どうこうはおそらく性格によるものであろうし、仕草は振る舞いを優雅に見せるための訓練とやらをさせられたのが原因であろう。
幼少からの性格や身に付いた仕草を、いまさら改めることは不可能である。
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