ー 其の零 十六夜月の出逢い ー

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 蒼は、渡された着物を受けとると無言で、それを『ジッ』と見つめている。  蒼が着ていたものが、どう見ても『普通』ではなかったので、何となく予想は出来ていた。 土方は、小さく溜息を吐くと、蒼から着物を奪った。 土方 「いい、着られねえなら、そう言え。ほら、着せてやる。」 そう言いながら、されるがままの蒼に着付けてゆく。蒼は暫く、黙っていたが、赤い顔で、ポツリと一言だけ口にした。 蒼 「……すみ、ません………主様………。」 土方 「だから『いい』って言ったろ。それから『主様』は、やめろ。『土方』でいい。」 着付け終わった土方が、そう言った。しかし、蒼の姿は想像した通りになっていた。  袖は膝位まであり、はだけた襟あわせから、桜色に染まった肌が晒け出されている。 裾は引き摺るほどで、乱れた合わせから太股が見えていると言う、何とも『しどけない』格好だった。    しかも、何故だか、その様が妙に『艶かしい』。扇情的なこと、この上ない。 土方 (……………『女』だったら、速攻で食っちまってたんだが。『男』でも、これなら充分『イケる』だろうな。)
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