ー 其の肆 受難 狂犬の帰還 ー

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ー壬生浪士組屯所 副長室ー  この日は、何故か朝早くから、土方の『機嫌』が、いつもより『すこぶる』悪かった。  心なしか、土方お馴染みの『眉間の皺』も、三割増しくらいで、多い気さえしていた。  その『理由』に、全くと言っていいほど『思い到らぬ』蒼は、恐る恐ると言った感じで、戸惑いがちに問い掛けた。 蒼 「………あ、あのぅ………土、方様……?どう、か…なさった……んです、か………?」  遠慮がちに投げ掛けられた蒼の問いに、土方は珍しく逡巡しているようだった。  土方にとって、蒼を『不安』にさせるのは、望ましくはなかったが………。知らぬままでは『尚更、危険』かも知れない、と判断したのか。  重々しく且つ苦々しげに、慎重に言葉を紡いだ。 土方 「………あぁ、悪い蒼、怖がらせたか?………実はな、芹沢等が帰ってきやがったんだよ。ったく、せっかく『面倒事』が減ってたって言うのに………。」  本来。『筆頭局長』である芹沢だが、所謂『試衛館一派』、特に土方に到っては、芹沢を『立てる』、ましてや『敬う』気などは微塵もなく。  隊士達の目のないところでは、万事が『この調子』なのであった。
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