ー 其の肆 受難 狂犬の帰還 ー

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 粗暴で、『傍若無人』な芹沢の振る舞いは、『壬生浪士組』の評判を下げる一方でしかなく、土方達『試衛館一派』の『頭痛の種』だったのだ。  更に、芹沢の『粗暴な振る舞い』は、一旦『酒』が入ろうものなら、手が付けられない。  芹沢が『何か』を仕出かす度に、その『後始末』に、土方が『奔走する羽目』になる為、土方と芹沢は『水と油』のように、全くと言っていいほど、合わないのだ。    ーそして。何より、今は『蒼』がいるー  土方の『懸念』は、やはり『蒼のこと』。いくら『土方の小姓』とは言え、曲がりなりにも芹沢は、この『壬生浪士組』の『筆頭局長』だ。  蒼のことを、このまま『隠し通す』ことは、出来ないだろう。それに、もう芹沢は『誰か』から、『蒼のこと』を聞いているはずだ。………けれど………       ー逢わせたくなんかないー  蒼の『美貌』は、この世のものとは思えぬほど『稀有なもの』。これほどの『美貌』を誇る蒼に、あの『好色』な芹沢が『目を付けぬ』はずなど、ないのだから………。  ましてや。今まで誰一人として、『執着』などしたことのなかった土方が、『ご執心』ともなれば、尚更なのである。
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