ー 其の弐 甘党剣士と昼の京 ー

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ー蒼が、己は『無性体』だと打ち明けてから、既に数日が経っていた。  表向きは『副長付き小姓』である蒼だが、土方は『猫可愛がり』しており、その『執心』ぶりは『寵愛』と言っても過言ではなかった。  そもそも。土方だけに限ったことでなく、幹部達は皆、蒼に『好意的』だ。蒼の愛らしさは『猫』や『女子』を、遥かに凌ぐほどであったから…………。  筆頭は、やはり『一番隊組長』であり、『副長助勤筆頭』でもある、沖田だったのだが………。  けれど。それほど『可愛がられていれば』、当然、それを快く思わぬ隊士達は、陰口を叩くようになった。  そんな下らぬ輩も増え始めた、ある日のこと。最早『日常茶飯事』と課した光景が繰り広げられる。 ー壬生浪士組屯所(前川邸) 副長室ー  土方は、朝食後。蒼と二人きりの時間を満喫していた。蒼も心なしか、穏やかな表情を見せていた。すると…………… ーパタパタパタ、スッパァーンッ 沖田 「おはようございます、蒼君。いい天気ですよ、今日こそ『一緒に』出掛けませんか?」  ニコニコとした『無邪気(に見えるだけ)』の笑顔を浮かべて、蒼を町へと誘いに来た沖田。
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