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「ナイトだって魔法が使えるのになぁ…」
「おいおい、そりゃどういう意味だよイヴ。僕だってこの世界の住人なんだ、魔法の一つや二つ使えて当然だろ?」
「はぁ、イヴも早く魔法が使えるようになりたいなぁ…」
イヴははやる気持ちを抑えつつ、再び鏡に目をやった。鏡の中の子供たちは皆サンタクロースであるお祖父さんへのお願いに必死である。イヴもお祖父さんにお願いすれば魔法が使えるようになるのかな、なんて考えつつ、ナイトを抱えジッと鏡を見守っていた。
………その時だった。
「………あれ?」
鏡の中に映る一人の少年。褐色の肌に漆黒の黒髪。少年はベッドの上に座りながら一人、窓の外をボーッと見つめていた。
年の頃はイヴよりも少し上だろうか、くりっとした大きな瞳が特徴的な少年。しかしその少年は他の子供たちとは違い、まるで笑顔を見せることなく、どこか物憂げな表情を浮かべていた。
「あれ、この子………なんだかつまらなそうな顔をしてる。どうしちゃったのかな…」
クリスマスシーズン。子供たちは誰もが一様にサンタクロースから貰えるプレゼントを心待ちにし、皆が幸せそうな笑顔を浮かべている。しかし少年はまるでそんなものなど意にも介さぬ様子でクリスマスを迎えようとしていた。
それはイヴが初めて見る光景だった。
イヴは誰もがクリスマスを楽しみにしているものだと思っていた。そしてそれを疑わなかった。
「………ねぇ、ナイト。見て?この子全然クリスマスを楽しみにしていないよ?」
「ん?イヴの見間違いじゃないのか?クリスマスを楽しみにしていない子供なんている筈がないよ」
「でも、確かに…ねぇ、お祖父ちゃん。クリスマスは皆が楽しみにしているんだよね?でもこの子、全然楽しそうじゃないよ?」
イヴが後ろを振り返ると、お祖父さんが少し曇った表情で鏡を見つめていた。
「ふむ…なぁイヴよ。確かに子供たちは皆クリスマスを楽しみにしておる。大半の子供たちはそうじゃ。しかしの、残念ながら中にはそうでもない子供たちもおるのじゃよ」
クリスマスを楽しみにしていない子供たちがいる…?イヴはその事実に言葉を失った。
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