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クリスマス。それはサンタクロースの魔法に彩られた奇跡と感動の一日。なのにそれを楽しみにしていない子供たちがいるなんて…。
イヴはなんだか悲しくなってしまった。
「クリスマスを楽しみにしていないなんて…なんだか可哀想。ねぇ、お祖父ちゃん。お祖父ちゃんの魔法で何とかしてあげられないの?」
「残念じゃがな、イヴ。それは無理なんじゃ。いくら儂の魔法といえども、人の心までは変えられんのじゃよ」
ふぅ、と小さくため息をつき、お祖父さんはすごすごと自分の椅子に座った。心なしか周りの皆もどこか落ち込んだ様子であった。
「ねぇファニーベル、どうにかならないの?」
ファニーベルは力なくベルをチリンと鳴らす。
「…残念ながらイヴ様、わたくし共でもそれは不可能なのです。クリスマスを楽しみにしていない子供たちがいるのは悲しい事ですが、しかしわたくし共でも子供たちの心を操る事などとても不可能なのです」
「けど…けど、皆は魔法が使えるよ?イヴと違って皆魔法が使えるじゃない。だったら魔法を使えば…」
「…魔法っていうのはの、イヴ。そんなに万能なものではないのじゃ。魔法を使ってもどうにもならない事もある。これは仕方がない事なのじゃ」
落ち込んだ様子で書類で顔を隠すお祖父さん。イヴはぺたりと絨毯の上に座ると、再び鏡に向かい合った。
「ねぇ、ナイトは知ってたの?クリスマスを楽しみにしていない子供たちがいるって」
「うん?いや、僕は知らない。そもそも僕、サンタクロースの仕事手伝った事ないし」
くぁあ、と欠伸混じりにそう答えるナイト。イヴは鏡の中の少女を見つめ、そしてある事を考えていた。
「…ねぇ、ナイト。この子、イヴたちの力でなんとか出来ないかな?」
「なんとかって…なんなのさ?」
不思議そうな瞳でイヴを見上げるナイト。
「イヴたちの力でこの子がクリスマスを楽しみにしてあげられないかな?」
ジッと鏡を見つめ、そう語るイヴ。
腫れ物にでも触るように鏡の中の少年を見ないふりをし、黙々と働くサンタクロースの仲間たち。
そんな中、イヴの決意を聞いたナイト。
イヴの瞳に宿る強い意思。それはイヴが初めて見せる、奇跡の始まりであった………。
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