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☆ミ
「駄目だって何度言ったら分かるの!いい加減にしなさい、イヴ!」
大きな暖炉の前、怒声を響かせるお母さん。その声に反応してか、暖炉の火がゆらゆらと揺れた。
「鏡の中の男の子のところに行くって、それがどういう事か分かっているの?イヴ」
お祖父さんの手伝いを終え帰宅したお母さん。イヴはお母さんにお祖父さんのところに魔法の鏡を見に行った事を話し、そして鏡に映った男の子の話をした。
お母さんもクリスマスを楽しみにしていない子供たちの事を知っていた。お祖父さんのすぐ側でサンタクロースのお仕事を手伝っているのだから、それは当然の事だろう。
イヴが皆にあの男の子を笑顔にするのは無理だと言われたと話すと、お母さんもそれに同意した。イヴはどうしてもそれが許せなかった。
「だけどね、お母さん。イヴ、どうしてもあの男の子にクリスマスを楽しんでもらいたいの。だってクリスマスは皆が笑顔になる一日なんだもん」
「それは皆分かっているわ。けどね、イヴ。この世の中にはどうにもならない事が沢山あるの。たとえ魔法を使ったとしても、それは無理なの」
その言葉はお祖父さんの部屋で散々聞かされた言葉だった。お祖父さんも、ファニーベルも、他の皆も、そればかりはどうしようもないと諦めていた。
けど、それでもイヴは何かせずにはいられなかった。イヴはどうしても皆に笑顔でいてほしいのだ。
「それは皆が思ってるわ。お祖父さんだって、私だって、皆が笑顔になってほしいとおもっている。けどね、イヴ。たとえどんな魔法を使ったとしても、その子を笑顔にすることは、お母さん達にはきっと出来ない」
イヴには分からなかった。どうして皆は何もしないでそんなこと出来やしないと決めつけてしまうのだろう。イヴは魔法を使えない。どんな魔法があるのかもよく分からない。けれど、もしかしたらあの男の子を笑顔にする魔法があるかもしれないじゃないか。
何もせずに諦めてしまうのは、どうしても納得がいかない。
「だからって、イヴに何が出来るというの?イヴはまだ魔法が使えないでしょ?」
お母さんのその言葉に、イヴは黙ってしまった。
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