雪の降らない街。

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   お母さんが言うように、自分に何が出来るのか、それは分からない。お母さんやお祖父さんのように魔法が使える訳でもない、イヴはただの子供である。  けど、何もしないよりはマシなはず。イヴはそう考えている。 「だからって、イヴが行く必要は………」  まぁまぁと、お父さんがイヴ達の間に割って入る。 「イヴだってイヴなりにクリスマスを心配しているんだ、サンタクロースの孫娘として立派な事じゃないか」 「だけどイヴはまだ子供なのよ?そんな危険な真似をさせるなんて…」  イヴの事がよほど心配なのだろう、お母さんは頑なにイヴが少年の所へ行くことを認めようとしなかった。  何より、イヴはお母さんの一言が気になっていた。“危険な真似をさせるなんて…”。それは一体どういう意味なのだろう。  少年やその他の子供たちが住む世界とイヴが住むこの世界は似て非なる世界である。  イヴはこの世界から出たことがまだ一度もなく、その世界がどんなものなのかよく知らない。お母さんが昔読んでくれた絵本の中でしかその世界の事を知らない。  なんにせよ、お母さんはきっと、イヴがその世界に行こうとするのを認めてくれはしないだろう。 「ねぇ、イヴ」  お父さんが口を開く。 「イヴの気持ちはとてもよく分かるよ。せっかくこうして皆が一生懸命頑張っているんだから、皆にクリスマスを楽しんでもらいたい。けどね、イヴ。それでイヴがもしその子の所へ行ったとしたら、お母さんはきっと、不安で不安でとても幸せなクリスマスは迎えられないよ?お母さんだけじゃない、お祖父さんも、他の皆も、きっと幸せなクリスマスは迎えられない。そうじゃないかな?」 「それは………」  お父さんの言うことは尤もだ。イヴはその子の事ばかり考えていて、イヴがいなくなった時の事を考えてはいなかった。  イヴはお母さんやお父さん、お祖父さんに他の皆に会えなくなると寂しくなる。きっと、他の皆もイヴに会えなくなると同じ想いを抱くのだろう。 「その子の事も大事だけど、それ以上に僕たちにとってイヴは大切な存在なんだ。それを忘れないでほしいな」  にっこりと微笑むお父さん。その笑顔にイヴはすごすごと自分の部屋に向かうのであった。  
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