雪の降らない街。

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          ☆ミ  自分のベッドにダイブしたイヴ。ふかふかのベッドで弾みながら、イヴは今日一日の事を思い返していた。お祖父さんの家に遊びに行き、魔法の鏡であの女の子を見たことを。  イヴの周りの皆は、決してイヴがその世界に行くことを許しはしなかった。しかし、それが逆にイヴに火を点ける結果になろうとは誰一人思ってはいなかった。  ………いや、一人を除いては。  ガチャリ、とドアノブが廻り、お父さんが顔を覗かせる。 「イヴ、まだ起きていたのかい?」  うん、とイヴが小さく頷くと、お父さんはにっこりと微笑んだ。 「そうか…なら少しお話をしようか」  よいしょ、とお父さんはベッドに腰掛ける。お父さんと一緒に入ってきたのだろう、ナイトがそれと同時にベッドに飛び乗り、枕元に丸くなる。 「なぁ、イヴ。君は本当は諦めてないんだろうね。あの子を笑顔にすることを」  その言葉にイヴは小さく頷いた。 「だろうね…だと思った。ねぇ、イヴ。もし本当にイヴがあの子をなんとかしたいと思っているのなら…僕が手伝ってあげる」 「えっ…いいの?」  お父さんの言葉にイヴは驚いた。お母さんもお祖父さんも皆それを諦めてイヴの事を引き止めた。なのにお父さんは何故イヴを送り出そうというのだろうか。 「ありがとう、お父さん。だけど、本当にいいの?皆イヴがあの子のところに行くのは駄目だって…」 「ふふふ、血は争えないというかなんというか…もう十五年も昔の話になるのかな。イヴのように魔法の鏡の前でクリスマスを楽しみにしていない子供の姿を見て、自分がその子を笑顔にしてみせるとお祖父さんの制止を振り切って向こうの世界に一人旅立った少女がいたんだよ」  え?と、イヴは眼を丸くする。 「彼女は小さなソリに乗り向こうの世界に旅立った。小さなランプの灯りだけを頼りにその子の元へ。そして彼女は小さな奇跡を起こした。彼女が使った魔法はその子を笑顔に変え、そして最高のクリスマスを迎えたんだ。そして笑顔になったその子は女の子に恋をした。彼はそれから成長し、その女の子にプロポーズをした。二人は結婚し、やがて彼女にそっくりな女の子が産まれた…」 「ねぇ、お父さん。その子ってもしかして…」 「その子の名前はイヴ………そう、君のことだよ」  
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