雪の降らない街。

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   お父さんが話してくれた話は、驚くべき話であった。サンタクロースの娘であるお母さん。そのお母さんが過去、イヴと同じように子供を笑顔にする為に一人向こうの世界に旅立ったなんて…。  …いや、それよりも。今の話によると、お父さんはその時お母さんと出会い、そしてこちらの世界にやって来た…そういう事になる。それってつまり…。 「………さぁ、もう寝なさい、イヴ。明日も早起きしなきゃいけないだろ?おやすみ………イヴ」 「うん、おやすみ………お父さん」  お父さんはイヴにキスをすると、電気を消しイヴの部屋を後にした。その横顔は少し寂しそうだった。イヴはナイトを引き寄せ、ぎゅっと抱き締める。 「………ねぇ、ナイト。今の話、聞いてた?」 「………うん、とりあえず離してくれる?苦しいから」  駄目、と首を振るとナイトは諦めたようにはぁ、と溜め息をついた。 「お父さんが向こうの世界の人だったなんて…イヴ、全然知らなかった。ナイトは知ってた?」 「んにゃ、全然。ってか十五年も前の話、僕が知ってる筈ないじゃん。僕まだ三歳だし」  そうだよね、とイヴは小さく呟いた。イヴもまだ七歳、どちらにせよお父さんやお母さんの過去など知る由もない。  しかし、イヴにはそれ以外にも気になる事があった。もし本当にお父さんが向こうの世界の人間だったとしたら…イヴが魔法を使えないのはもしかして…。 「…ねぇ、ナイト。ナイトも一緒についてきてくれる?イヴと一緒に向こうの世界に…」 「ん?んー…めんどいからやだ」  ぎゅ、と髭を引っ張る。 「えー、きこえなーい。なんて言ったのー?」 「痛っ!痛い痛い!!分かった分かった!僕もついて行くよ!!はぁ、もう…イヴって時々強引なんだから…」 「ナイトはイヴのペットなんだから当たり前でしょ?………ふふっ、ありがとう、ナイト」  ナイトに礼を言い、イヴは布団を頭まですっぽりと被った。ふかふかの布団にすぐにウトウトとするイヴ。その姿を見て、ナイトは小さく息を吐いた。 「はぁ、まったく…手のかかるご主人だこと…」  そしてナイトは小さく微笑むと、ゆっくりと眠りについた。  
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