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☆ミ
「よし…準備万端だね」
イヴは小さなリュックサックに着替えとタオル、キャンドルにベル、サンドイッチに沢山のお菓子を詰め、水筒、ランプを肩から揺らし、フードのついた真っ赤なコートを着、グルグルと真っ白なマフラーを巻き現れた。
「うわっ、なんか凄い格好だね、イヴ。それでちゃんと歩けるの?」
ナイトといえば、イヴとは違い実に簡素なものだった。昨年の冬にお母さんに編んでもらった猫用の手袋とマフラーをつけ、あとは手ぶらで行くらしい。
「ナイトの方こそ…そんなんで大丈夫なの?荷物らしい荷物は無いみたいだけど…」
「ん?大丈夫大丈夫。荷物は必要最小限の方が動きやすくって楽だからね」
んんっ、と大きく伸びをするナイト。家の玄関で互いの荷物チェックを済ませたイヴとナイトは、いざ向こうの世界に旅立たんと勢いよくドアを開く。
お父さんの話ではお父さんがイヴ達の為にソリを用意しておいてくれるらしい。それに乗って向こうの世界に旅立つのだ。それを考えただけでイヴは胸が踊った。
イヴの家からお父さんの職場まではそう遠くはない。犬ゾリで五分、歩きでも十分くらいの距離である。イヴは昨晩降り積もりふわふわなままの新雪の上を歌い歩きながら、お父さんの待つトナカイ飼育所へと向かった。
“さぁ祝おう 明日は前夜祭
クリスマスイブがほらやって来る♪
ケーキにお菓子と ローストターキー
プレゼントも勿論忘れずに
教えてサンタクロース 今年のわたしは いい子で一年過ごせたかな?
聞いてよサンタクロース 来年のわたしも いい子でいるからほら待っててね
さぁ祝おう 明日は前夜祭
クリスマスイブがほらやって来る♪
さぁ皆集まれ 明日は前夜祭
クリスマスイブがほら待っている♪”
イヴ達が道なりに歩き進んでいくと、やがて弓なりになった建物の屋根が見え始めた。遠くから聞こえるトナカイの鳴く声。トナカイ飼育所、到着である。
「はぁ、もう…寒いったらないなぁ。早く暖炉の前で丸くなりたい…」
「ナイトったら、寒いとすぐそれなんだから…お父さーん、イヴ来たよー?どこー?」
すると、奥の方から微かにこっちだよー、と呼ぶ声が聞こえた。
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