雪の降らない街。

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   声のした方へと歩いていくと、そこにはトナカイに囲まれながらトンカントンカンと音を立てながらソリを木の板で補強しているお父さんがいた。 「やぁ、待ってたよ、イヴ。おや、ナイトも一緒に来たのか。ちょっと待っててくれるかな?今ソリの修理が終わるから…」  トンカントンカンとカナヅチを振るお父さん。いよいよイヴが乗るソリのお披露目となるのだ、嫌がおうにもテンションが上がる。 「楽しみっ♪楽しみっ♪」 「はははっ、イヴはよほど向こうの世界に行くのが楽しみなんだな。さぁ、もういいよ。君のソリの完成だ」 ひょこっ、とイヴがお父さんの足越しにそのソリを見る。それは古びているものの真っ赤で可愛らしいソリだった。 「うわぁ…このソリ可愛いね。けど凄いね、お父さん。一日でこんなソリを作れるなんて…」 「あはは、いや、そうじゃないよ。お父さんはこのソリをまた乗れるように直していただけなんだ。このソリはね、イヴ。お母さんが昔、向こうの世界に旅立った時に乗っていったソリなんだ」 「お母さんの………」  イヴはお母さんがこのソリに乗って大空高く飛び回る姿を思い浮かべた。今のお母さんから、どんどん子供へその姿は移り変わっていく。しかし、イヴはお母さんが子供の頃の姿を知らない為、その姿は次第にイヴに変わっていった。 「凄い………凄いね、お父さん。お母さんが昔乗ったソリにイヴが乗るなんて、こんなに素敵な事はないわ。イヴこのソリとっても気に入ったよ。ありがとう、お父さん」 「いや、いいんだよ。そうだ、イヴ。ソリを用意したのはいいんだけど、一つ問題があってね…」  お父さんはモゴモゴとそこで口ごもる。 「まぁ、なんだ。今がクリスマスシーズンで忙しいっていうかなんというか…そのソリを引くトナカイがね、いないんだよ」  えっ?とイヴが眼を丸くする。天国から地獄とはこの事である。 「ソリを引くトナカイがいないなんて…それじゃあお父さん、このソリは動かないわ?」 「うーん、いや、いることはいるんだ。ただね………少し問題が………モンタナ!モンタナ!!」  ピィィィッーーー!!!という指笛と共にモンタナの名を呼ぶお父さん。すると飼育所の奥の方からゆっくりと小さなトナカイが姿を現した。  その鼻は、赤く染まっていた。  
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