雪の降らない街。

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   モンタナと呼ばれたそのトナカイはのそのそとお父さんの元に歩み寄ると、ボーッとした瞳でイヴを一瞥する。 「お父さん、このトナカイは?」 「コイツの名前はモンタナ。見ての通り少し身体は小さいけれどパワーはそこら辺のトナカイにひけは取らないよ。だけどね…」  お父さんの表情が少し曇る。 「………この子には生まれつき他のトナカイと違い一つ問題があった。それはね…鼻が赤いことさ」  鼻が赤い…?確かに、モンタナの顔の中心にある鼻は他のトナカイと違い赤く染まっていた。 「どういう事?お父さん。鼻が赤いと何か問題があるの?」 「ソリを引く事には何も問題はないよ。けどね、ソリはたった一匹で引くことは出来ない。何匹も連なって引くんだよ。けど、モンタナはそれが出来ないんだ。鼻が赤いこと。それは他のトナカイとは違うという事。トナカイは仲間と認められないトナカイと一緒にソリを引いてはくれないんだよ…残念な事にね」 「それってつまり…仲間外れって事?」  イヴがモンタナの方を見ると、モンタナはすっと目を逸らしそっぽを向く。イヴがモンタナに近付いても、モンタナはイヴから離れてしまう。  鼻が赤いという理由で今までずっと仲間外れにされてきたモンタナ。彼は今までどんな思いをしながら生きてきたというのだろうか。 「どうすんだよ、イヴ。他のトナカイにしてもらうのか?けど今から別のトナカイを一匹借りてもサンタクロースの邪魔にならないのかな…?」 「そうだなぁ…なんとか出来なくもないけど…どうする?イヴ。そうするかい?」 「ううん…ねぇ、お父さん。イヴ、モンタナとお話がしたい」   そう言うとイヴはモンタナに近付いていく。モンタナはそれから逃げるように身を逸らしていたが、やがて真正面からイヴに向かい合った。 「………こんにちは、モンタナ。イヴよ。はじめまして」  イヴがニコリと微笑むと、モンタナはぶるん、と首を振った。 「イヴね、あなたにソリを引いて向こうの世界に連れていってもらいたいの。お願いできる?」 「………嫌だ」  モンタナが応える。 「俺はここでの鼻つまみものだ。そんな俺にソリを引けなんて…」 「イヴはモンタナにソリを引いてもらいたいの。モンタナ以外じゃ駄目なの」  真っ直ぐなイヴの瞳。その瞳にモンタナは動揺を隠せずにいた。  何故この子は自分なんかを…。  
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