雪の降らない街。

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   俺は生まれてすぐ、親に捨てられた。理由は一つ、鼻が赤いからだ。  俺はそれでも信じていた。いつの日か誰かが俺の事を受け入れてくれると…けど、俺を受け入れてくれる奴は誰もいなかった。  赤い鼻をした、嫌われもののトナカイ…それが俺なんだ。  それ以来、俺はたった一人で生きてきた。誰とつるむ事もなく、誰に媚びる事もなく、俺は一人でずっとやって来た。  だから………。 「イヴね、モンタナと友達になりたいの」  そんな事を言う奴がいるなんて………考えてもいなかった。 「なんで………」  モンタナはイヴを見つめていた。その瞳は動揺に満ちていた。 「イヴね、いつの日か立派なサンタクロースになるのが夢なの。モンタナは知ってる?サンタクロースはね、世界中の子供たちを笑顔にするのが仕事なの。だからイヴね、モンタナに笑顔になってもらいたいの」  俺を………笑顔に? 「俺は………ただのトナカイだぞ?子供たちじゃない、そこら辺にいるトナカイだ。だから…」 「だからイヴはね、モンタナを笑顔にしたいの。さっき初めて会ったとき、モンタナとっても寂しそうな顔をしてたの。一人でいるのは寂しいってそう言ってる気がしたの。だからね、イヴ、モンタナが一人にならないように、モンタナのお友だちになりたいの。そうしたらモンタナはもう寂しい顔をしなくても済むでしょ?」  この子は本気で…そんな事を言っているのか?俺が一人で寂しくないように、自分が友達になるって…。 「イヴだけじゃないよ?ナイトだってモンタナのお友だちだよ?」 「ぅえっ!?僕も!?」  驚いた様子で飛び上がる黒猫。 「まったくイヴは勝手なんだから…あー、まぁ、なんだろ…よろしく、モンタナ。にゃはは…」  力無い笑顔でぴょこぴょことシッポを振る黒猫。 「………本当に、俺でいいのか?俺なんかで、本当に………」 「イヴはモンタナがいいんだよ。だってモンタナはイヴのお友だちだもん」  真っ直ぐなイヴの瞳は、遮蔽した俺の心を開くようで、その温かさは、俺の心を溶かすようで………。 「………モンタナ?」 「………なんでもない。よろしくな………イヴ」 「こちらこそよろしく、モンタナ」  イヴが微笑む。それにつられて、俺も微笑んだ。生まれて初めて、俺は他人に笑顔を見せた。  
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