雪の降らない街。

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   シャンシャンと鈴の音を鳴らしながら遠ざかっていく赤いソリ。お父さんはそれをいつまでも見守っていた。 「………行っちゃったわね」  スッ…と飼育所の奥からお母さんが姿を現す。不安そうな、それでいて満足げな表情でお父さんの隣に立ち、遠ざかるソリを見つめる。 「あぁ、行っちゃったね…イヴがさ、言ってくれたんだ。お父さんも魔法が使えるって。立派なトナカイを育てられる魔法を使えるんだって…」 「ふふっ、そうね。あの子にしてみたら、あなたも立派な魔法使いなのかもね」  クスクスとお母さんが笑う。 「イヴは昔の君にどんどん似てきたね…いつかきっと、あの子は立派なサンタクロースになるんだろうね」 「そうね…イヴなら大丈夫、私達の娘ですもの。きっとあの男の子を笑顔に変えてみせるはず…」  ぎゅっ、とお父さんがお母さんの手を握り、お母さんもその手を握り返す。粉雪が降る中、二人はいつまでも娘の成長を見守るように、ソリの行く先を見守り続けていた。         ☆ミ 「うわっ!わっ!!ちょっ、イヴ!!速い!!ソリ速すぎっ!!振り落とされるって!!」 「何言ってるんだ、こんなのまだまだ序の口だぜ?俺の本気はこれからだぜっっ!!」 「ちょ、モンタナぁぁぁ!!きゃあぁぁぁぁっ!!!」  猛スピードで雪原を駆け抜けるソリ。たった一匹でソリを引いているとはとても思えないほどのスピードにイヴとナイトは振り落とされそうになりながらソリにしがみついていた。 「おいモンタナぁ!!僕たちを殺す気かぁぁぁっ!!?」 「バカ言うなよ、これくらいスピードを出さなきゃ空なんて飛べる訳ないだろっ!?」 「えっ、空って………きっ、きゃあぁぁぁぁっ!!!」  その瞬間ふわり、と足元が軽くなったかと思うとイヴ達を乗せたソリはやがて地面から飛び立ち空を走り始める。びゅうびゅうと風を切る音に足元を走る針葉樹の森。舞い降る雪がパチパチと顔に当たり、目を開けることすらままならない。 「ぎぃやぁぁぁっっ!!飛んでるッ!!空を飛んでるよ僕たちっっ!?」 「当たり前だろ?さぁ、そろそろスピード上げていくからしっかり掴まってろよっ!!」 「いやぁぁぁぁぁっっっ!!!お母さぁぁぁぁぁぁぁん!!?」  大空に響き渡る一人と一匹の悲鳴。やがて悲鳴と共に赤いソリはもう一つの世界へと消えていくのであった。  
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