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「母さん………俺………俺………!」
母親にすがるように涙を流すトマス。母親は我が子を慈しみ、そっとその頭を撫でた。
「あらあら、男の子がそんなに泣くものじゃないわよ?」
「うん………」
「ほうら、顔を見せてごらん…トマス、久し振りね。あなたったらしばらく会いに来てくれないから、お母さんトマスに忘れられちゃったのかと思ったわ」
「そんな訳………ないだろ」
グスッ、と鼻を鳴らしながら、トマスは小さく微笑んだ。その笑顔は涙でぐしゃぐしゃになっていたが、とても素敵な笑顔だった。
「母さん…ごめんな、なかなかお見舞いに来れなくて。それに、手術の事だって…」
「…いいのよ、トマス。あなたがお母さんの為にどれだけ頑張ってきたか、お母さんちゃんと分かってるわ。だから謝る必要なんてないのよ?」
「だけど………」
その時だった。病室のドアが開き、何者かが室内に入ってきた。見回りの看護師かと警戒するトマスであったが、しかし室内に入ってきたのはトマスのお姉さんであった。
「トマス………」
「………姉さん。どうしてここに?」
「え?あぁ、今日はクリスマスイヴじゃない?だからたまにはお母さんと一緒に過ごしたらどうかって、黒猫ちゃんが…」
黒猫………見るとお姉さんの足元に一匹の黒猫がちょこんと立っていた。あぁ、そうか。わざわざあの時黒猫を置き去りにしたのは、姉さんを呼ぶためだったのか…。
後ろを振り向くと、目を潤ませながら満足げに微笑むイヴの姿があった。俺にとって最高のプレゼント………か。
「そうだ、それより二人とも聞いて!!実はね、お母さんの手術代が何とかなりそうなの!」
お姉さんのその言葉に、トマスと母親は目を丸くした。
「何とかなりそうって…え?」
「実はね、トマス。私たちの知らないところで、街の皆が少しずつお金を出しあってくれてね、お母さんの手術代の足しにしてってさっきそのお金を置いていってくれたの!」
街の皆って………。
「トマス、あなたのおかげよ?トマスがいつも一生懸命に働いてお母さんの手術代を工面しようとしている姿を見て、皆が協力してくれたの。みんなトマスのおかげだよ?」
「俺の………」
トマスの目に再び涙が滲んだ。
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